デジタル・ショット 「春夏秋冬・・・心向かう先」 No.108

夏のカワセミ物語

Photo by Ken Ohsawa
2008..7.25-8.15
Digital Still Camera : NIKON D300
Photo Retouch::ACDSee 9 Photo Manager&Ph
otoshop CS2

* このページの広さは、【解像度 XGA 1024×768 】 で作成しています。 画面を最大化してご覧ください。
* 許可無く、画像を二次利用することを禁止します。


凍えるような真冬の小川を撮り歩いていた時、道端に立ち並ぶスポーツカメラマンらしき人影。
その先に何があるのか、不思議に思い、レンズの先に視線を移し待つこと数時間、
“青い光線”のようなものが走ったと思った瞬間、水中から飛び出して来た小さな小鳥が、
15mほど先の川に中に立てられた小枝の先に小魚をくわえて止まっていた。

それが、今では1週間も会っていないと気になってしまうカワセミ(翡翠)との出会いだった。
小学5年生から50余年という写真歴の僕が、2005年1月に初めて出逢った小鳥「翡翠」であった。
後で、この美しい小鳥が「飛ぶ宝石」、英名「King Fisher」(魚捕り王者)と呼ばれていることを知る。

渡りをせず、春夏秋冬365日、水辺に棲んで、水中にダイビングして小魚や川エビなど捕りながら、
平均2年間という短い命を受け継ぐために、恋をして、家族を創り、育てて、守っている。


「万物寿命事典」によれば、稚魚ほどでないが、小鳥たちの生存率は20%前後と意外に低い。
人間、植物を含めた生物の養分補給連鎖の底辺層に属している主な鳥類の平均寿命を見てみよう。

ハクチョウ:70年、フクロウ:68年、コンドル:60年、オウム:50年、ワシ:40年、ツル:40年、カモメ:30年、
ハト:30年、アヒル:20年、スズメ:20年、ヒバリ:18年、シジュウカラ:10年、カナリヤ:10年、ウグイス8年、
コマドリ:8年、ブンチョウ:7年、オオルリ:5年、ミソサザイ:3年と記録されている。


このなかでカワセミの平均寿命は2年と最も短命で、言わば“小鳥のカゲロウ”だ。
土手などに横穴を掘って営巣するカワセミは、蛇やカラスやトビなどに狙われる危険性も高い。

その代り、成鳥の飛翔速度、瞬発力や視力や水中補足能力(成功率80%)は驚異的である。
鳥には珍しく雌雄ともに、背中はブルーとコバルトブルー、腹はオレンジ、脚は朱という美しさである。
メスのクチバシ下側は、黒くなくやや朱色がかっているので区別できる。

「鳥撮影」の始点であり、終点であると言われてきた魅力は、
美しさに加えて季節を問わず見せてくれる表情、
必死に生き抜く姿と、個体ごとに少しづつ違う性格と家族などのドラマ性にあると思う。

小さく、美しく、俊敏な
彼らを、正確に美しく感動的な写真作品に仕上げるために
必要な撮影機材は、まさに「スポーツカメラマン」たちと同等以上の準備が必要だ。

450mm以上の解放F4以上の明るさのレンズ、秒間5コマ以上の連写が可能で、
瞬間移動する小鳥を迅速にフォーカスできるカメラ本体機能と、それらの重量を支えながら
ブレを最小限に止め、動かしながらレリーズできる堅固な雲台と三脚、照準器などが要る。
最良の撮影機材を求めて行けば、何百万円の投資が必要になる世界である。


とはいえ、最も大切なことは、カワセミが好きで、その環境を知りたい思いが持てるかどうかだ。
見渡せば、自然の中には、花々や小鳥や昆虫たちの短い命で溢れている。
カメラを持てば誰でも、何時でも、“命の交差点”に立ち会い、感謝しつつ、輝く瞬間が記録できる。

*

冗長になってしまいましたが、今回のご案内は、今まで数回に分けて撮り貯めてきた中から、
2008年の夏、あるカワセミ家族の感動のドラマを記録した一連の写真です。

どうぞ、お手すきな折に、コーヒーでも飲みながら、ごゆっくりご覧ください。





≪7月25日・31日撮影≫

カワセミは春から初夏にカップルになると、営巣して1〜3回産卵して子育てする。
ここでは、この時期、オスが土穴を堀り枝葉を運んで造った巣に、
メスが抱卵して孵した数羽の幼鳥が待っていて、
オスは、何度となく水中へダイビングして捕えた小魚や川エビなどを運んでいる。

この個体は、トップの羽毛が乱れていて奮闘が想われるので、「ベッカム父さん」と名付ける。


No.01  穴掘りなどで擦り切れ乱れた羽毛




No.02  恋する時期の美しい姿が急速に崩れて行く




No.03  狙って飛び出した直後の“ホバリング” (飛行修正のため空中停止。“ホバ”と略称)




No.04  水中突入直後 (頭が見える。 入水時は吹き矢のような形で飛沫は少ない) 




No.05   渡しやすいように銜えなおして運ぶ




No.06




No.07   すぐに次の捕餌に戻ってきてポイントを探す




No.08   “ホバ”中のカワちゃん




No.09  これも同じ (夏は水面が反射し、風でさざ波ができと小魚などを見失うことがある)




No.10  一瞬で、水底に衝突することもなく、餌を捕って飛び出してくる能力に驚く




No.11  まだ水膜が残る飛び出しの一瞬




No.12  時には失敗する (成鳥の成功率は80%前後と高い)




No.13  これも自分のためでなく、運ぶようだ (餌の向きを変えている) 




No.14




No.15  休憩中のベッカム父さん (羽毛の抜け、艶が消え、痩せた姿が可哀そう)



≪8月5日撮影≫

カワセミの幼鳥たちが巣から出てきて父親から餌捕りの訓練を教わる時期である。
他の鳥に比べて約1週間と、幼鳥たちが教わる期間はとても短い。

1回目の産卵から成長した幼鳥(1番子)と、2回目の幼鳥(2番子)が同時に見られる日だった。
子どもたちは父親が捕った獲物を欲しがって寄り付くが、
父親は、自分で捕ることができる子には翌日から拒否して、追い払うことが多い。

カワセミは自分の領域を持つ習性を持ち、早く自力で生き抜く生活へ誘導する“愛のムチ”である。


No.16  幼鳥(2番子)2羽並び (色合いが薄く嘴が短く、脚は朱色が薄い)




No.17




No.18  1番子とのトリプルショット (父に追われるので止まれない)




No.19  諦めて飛び去る




No.20  「食べたいよう〜!」とねだる1番子




No.21    自分で捕るように言い聞かせている




No.22  止まっていると追い出される一番子 




No.23  この2番子が居ても、今日は餌を渡さないが、追い出しもしない(後継者か?)




No.24  自分で飛び込む2番子




No.25     見事成功、嬉しく誇らしげな2番子



≪8月10日撮影≫

日を追って、色鮮やかで逞しくなってゆく幼鳥たち。
その動きは、好奇心に満ちていて、様々に変化し、とても可愛い。

僕らには嬉しい撮影ラッシュの時間が多くなって、
何回もシャッター音が続き、通りすがりの方々からも歓声が上がる。


No.26  早い成長 (羽色が鮮やかに、嘴が伸び、脚も朱色へ)




No.27 この兄弟が一緒に居られる時間も残り少ない




No.28  “飛び出し”の瞬間




No.29  “飛びつき”の瞬間




No.30  練習なのか、小枝を銜えて飛び出してきた。




No.31  これは、捕りやすくご馳走の川エビ




No.32  逞しさも宿る表情の“ワカ” (♂の幼鳥の呼称) 




No.33  同時に着枝しようとするニアミス発生




No.34   ここも良い餌場になりそうだ



≪8月14日撮影≫

更に、逞しく成長した幼鳥たちの姿が見られる時期になった。
そのアクションは多様で魅力的なため、僕らは釘付けさせられてしまう。

これらのシーンを何回も撮れてしまうと、誰かが「キリがないから昼食に帰ろう・・・」
と思わず口に出してしまうほど、この夏、ここは贅沢な撮影フィールドに変わっていた。


No.35    北京オリンピック選手もビックリ、見事な反転宙返りダイビング




No.36  水中ダイビンク




No.37  飛翔




No.38  これは食後の口濯ぎ&水浴びか?




No.39  飛び出し直後の姿勢




No.40  飛び出し




No.41  飛翔する“ワカ” (幼鳥♀は“ヒメ”と呼ぶ) まだ嘴が短く先端が白い




No.42  視線の先には“ベッカム父さん”




No.43  止まり木に着く瞬間 (“飛びつき”)




No.44  高速飛翔する姿(“飛びもの”、青い光線のように見える)




No.45  夏色の水面をバックに“ワカ”




No.46  強い夏の逆光のなかの“ワカ”




No.47  夏の花々と  (小さな命の共存)




No.48  狙い姿勢を取る“ワカ”





そして、現れても誰もレンズを向け撮らなくなった“ベッカム父さん”の姿があった。
今はもう自分のために、ダイブして餌を捕り食べているようだ。

さすがの捕餌成功率だが、その姿は、既に美しさに程遠く痛々しいためである。
可哀そうだが「世代交代が近い」ことを想わせてしまう。

君の奮闘努力があってこそ、僕らはこうして君の子どもたちに楽しませて貰えている。
同じ父親として、家族を守り育てる潔い君から教えられたころも多い。

「ありがとう! 今はゆっくり過ごして欲しい。」
誰もが、そう思いながら心に記録するかのようにと眺めている光景にジーンときた。


No.49  今日はもう、子どもたちを気遣うことない“ベッカム父さん”




No.50  後ろ姿が疲れて小さく見える





END


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