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・と・


「2001年の日本」
《 33年前に予測した時代 》

 

 「1966年の夏---  正確に言えば、1966年<昭和44年>9月1日の午前8時33分ごろ、20世紀はその3分の2を終了した。われわれは、いま、20世紀の、のこり3分の1の入り口に立っている。・・・<中略*1>・・・この本は、この、きたるべき20世紀の3分の1のあいだに、どんなことが予想されるかを自由な想像力のよって描いてみた絵本である。」

 「この本におさめられた多様な予測が、ほんとうにそのとおりになるのかどうかはわからない。しかし、現代の人間の想像力のすべてがここには動員されている。そして、この本のどの部分をとりあげてみても、それは、読者のそれぞれの想像力を刺激するであろう。そして、そのようにして、刺激された読者の想像力や期待が、じつは、2001年の日本をつくってゆく力になるのだ。」

 「できることなら、この本は、だいじに取り扱って、2001年まで、保存していただきたい。いま、33年先を考えるのがたのしいとおなじように、2001年の時点で33年前(*2)をふりかえるのも、たのしく、また示唆にとむことであるにちがいないからである。」



このような「まえがき」で始まるこの本は、33年前の昭和44年に、加藤秀俊 京都大学助教授と挿絵画家 真鍋博氏の編著で、朝日新聞社から出版されている。わが国が、「戦後」を超えて高度成長へ向かう前、安保騒動で揺れながらも、希望に溢れ、輝きに満ちていた多くの人々に好評を得ていた。私も、大学卒業直前、入社が決まった1月に、記念にと横浜駅近くの書店で買い求めている。

当時流行っていた「未来論」の本なかの一つである。本書は、この時点で各分野の叡智を結集し正確なデータをもとに、こうなっていて欲しい・・・というところまで、自由な発想に満ち溢れて書かれていて、真鍋氏の明るい挿絵が良くマッチしていた。今、読み返してみると、このとき多感な青年であった私は、いたく感動したらしく、あちらこちらに書込みやラインが引かれている。

 本書が試みた予想は、未だバラ色の夢のままのものがいくつか有るが、特に印象的なのは、今の「インターネット時代」を次のように見事に予見しているくだりである。

「テレビ時代は、人間の文化的側面を揺り動かし“反射的” 人間像 をつくりだした。コンピュータによる情報ネットが国の隅々まで張り巡らされ、社会情報の共有が拡大した場合の、個々人の社会行動は、“受動的”なものか“能動的”なものへの転換し始め、『個の時代』の基本ツールとなるだろう。おそらく今日の電話やラジオ、TVが民衆のものなったとと同じように、コンピュータもそれに直結する小型の送受信装置を、家庭に、職場に、持ち、今日の情報手段(TV、電話、郵便、各種出版物など)の役割も、こうしたコンピュータ・ネットとなんらかの形で融合してゆくにちがいない。そして、国家的、世界的な情報網が、家庭の茶の間とも密着した形で形成されるだろう。個の力のネットを通しての結集により、都市計画、教育、国土開発など社会開発の分野の大掛かりな仕事がはじめられている。」


 本書の予測どおり、私たちは今、“パソコン”という高性能・小型化したコンピュータを持ち、「モデム」や「ターミナルアダプタ」や「ルーター」などによってネットに結合し、さらにそれが「インターネット」につながり、地球を覆う一つのネットワークの一員として、誰もが受・発信できる時代にいる。国家も、政治も、経済も、文化も、従来からの構造的な変革を迫られ、世界が一つの標準に向かおうとしている。これを活用した「社会開発」は、まさに21世紀の大仕事になろうとしている。

 加藤氏は、「未来へのアプローチ」と題する結びのなかで、ポール・フレックス著「時間の心理学」の記述を引用しながら、次のように述べている。

 「すべての人が、それぞれに『未来』をもっているのである。それをまったくもっていないとすれば、その人は、フレックスの指摘を待つまでもなく、どこかしらおかしい。すくなくとも、そういう人は、おもしろい人物ではない。」
 「『未来』はやわらかく、そして輪郭もおぼろげなものである。しかし、人間が選択的意志を積み上げてゆくことで、その姿は刻々と変わってゆく性質のものである。」
 「未来はバラ色ではない。いや、バラ色であるかもしれないが、そうであると断定できる根拠もない。<中略> しかし、そうしたすべてのことをわきまえたうえで、なお、われわれが未来に心を動かすのは、ただ『人間の正常な態度』を維持したいからである。」

 「未来に希望を見出してゆく限り、『人間』捨てたものではない。」 ・・・33年前の時代と比較してみた私の感想である。 

   注1:筆者による省略。この間の文章では、20世紀の3分の2も驚くような変化があったことの説明が例示されている。
   注2:本書には「33年後」と記載されている。「ふりかえる」という受けを考えてみて筆者の判断で変更している。


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